古民家再生・活用の希望から
学んだこと

遠藤 優樹

●はじめに

丹波篠山市は京阪神から最も近く自然環境や里山が残るエリアである。また中心産業の農業では黒枝豆や山の芋といった地域をあげてPRできる名産品も存在する。そのような都市部に住んでいる人からすると非日常とも考えられる丹波篠山市で2022年11月12日13日に里山アカデミーという観光コンテンツ強化モデル事業として参加させていただいた。
本稿では農業・林業の里山との関係性、また関係人口を増やすための6次産業と観光について論じていく。

●集落丸山で学んだこと

集落丸山の古民家再生・活用のお話を聞いたとき、やはりこの再生・活用の事業の目的としては、集落丸山を中心とした宿泊と観光の合わせによる移住者や関係人口の増加であると聞いた、それはおそらくどこの地域でも同じことを考えているだろう、
しかし、ここ集落丸山は古民家再生発祥の地とされており、いわば全国でそれらの認識が広まるきっかけとなった地でもあるということだ。
集落丸山の古民家再生・活用から地域活性化までの手順は、他の地域でも良いモデルになると感じた。特に今回お話を聞いた中で良いなと感じたのは、「田舎の悪いところは、実は良いところでもあるということを自分たちで気づくこと」と「古民家の良さ、活かし方を知っている設計士の方に古民家の設計を行ってもらう、もしくは助言してもらう」ことだと感じた。
特に後者に関しては、今まで見てきた古民家再生事業は、どれも古さを活かし、不便さを体験、楽しんでもらうようなものだったため、外装や内装は古民家の良さを感じつつ、しかし便利に暮らすことが出来るという古民家再生の在り方は私の中の常識を大きく変えた。

●他の田舎と比べた丸山集落の違和感

私は、大学のゼミでのフィールドワークで多くの地域を見てきたが、丸山集落はその中でも特に集落全体の雰囲気が良く、目には見えないが、活気あふれているように感じた。
私の地元であった福島県の地域と比べても、かなり雰囲気が違い、とても居心地がいいようにも感じられた、その理由は何なのか、里山アカデミー中にはその答えを出すことはできなかったが、終わってみて考えると、人口が少ない地域特有の寂しさや、閉鎖感が全くなかったということが挙げられるのかもしれないと感じた。

●集落丸山から他の地域へ

上記のように、地域の雰囲気が良い理由には、集落丸山のプロジェクトを好意的に感じている集落の方々の協力や、この地域を本当に良くしたいと考えている担い手たちの強い思いが丸山集落を包んでいるからだと感じる。どんなに良い宿泊施設、どんなに良い観光資源があったとしてもそれを維持する運営側の気持ちが籠っていなければ結局は廃れてしまう、この集落丸山はまさにそんな地域を再生するのに重要な事を教えてくれた。
このようなモデルを参考にしつつ、古民家再生・活用を行う、そしてそれが、地域の活性化に繋がっていく、集落丸山は地域活性化に向けた取り組みの中で一つのモデルとするのに最適な事例であると感じた。

●これからの集落丸山の課題

集落丸山は、個人的には古民家再生・活用の段階としてはかなり完成していると感じた。しかし、宿泊に際する料金が、若者にとっては少し高いと感じる部分があった。もちろん、収入が安定してくるような年齢層をターゲットにしているのかもしれない。
しかし、今の田舎には、若者の力が必ず必要になってくる。そうなった時、他の魅力ある地域で比較的安く田舎暮らしを体験できる場所が出来てしまった時、集落丸山はどうなってしまうのかということが少し気がかりだ、もちろん今までと変わらずリピートをしてくれる方や、新しく泊まりに来る方もおそらく多くいるだろう、だが、持続的にこれからも丸山集落が活性化していくには現在の集落丸山だけでなくお手頃な別の宿泊プランも考えていかなければならないのではないかと感じた。