先生のこと

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郷守り
農家
吉良 佳晃
丹波篠山 吉良農園 代表
吉良農園 https://kira.farm/
丹波篠山市の古市地区にて、家族で農業を経営。約1haの農場で年間50品種ほどの野菜やハーブ等を栽培。野菜の生長過程それぞれにスポットをあてた新たな商品を提案し続け、レストランのシェフ等と関係を築いている。また中山間地域という地理的制約の中で、刈り草や竹など地域資源を農業に活用していく視点を大切にしている。一方で、農村では担い手不足、里山の荒廃、獣害など多くの課題に日々向き合っており、これらの原因のひとつは、森林との適切な関係が失われてきことにあると言われている。私たちは農業を軸として、再び新しい関係をつくりあげるため、里山資源の活用、循環、事業モデルをキーワードとして「ミチのムコウ」プロジェクト (「丹波畦師〜たんばAZESHI〜」や「100人ではぐくむ 名前はまだ無い日本酒」、「Be Satoyama 2030」)を立ち上げ、参加者とともに解決に向けた取り組みをスタートさせている。

Q1.なぜ今の生業(農業)に就きましたか?

A. 使命感(農家の長男)が半分、あとは環境問題への挑戦。 長くなりますが、これには子どもの頃の原体験にまでさかのぼります(笑)。小学生の頃は夏のラジオ体操が終わると毎日山に行ってクワガタ採りをし、午後からは川で魚とりをするなど、生きものが好きでよく自然の中で遊びまわっていました。その影響か中学・高校の時に将来は漠然とですが(自然)環境問題の解決につながる仕事につきたいと思っていました。学校の授業やNEWS等で開発と環境破壊について触れる機会が多くなり、環境にやさしい材料開発などがしたくて、大学は工学部工業化学科に進学し、物理・化学を学びました。卒業後は化学メーカーに就職し、スマホやタブレットに使われているタッチパネルの部材開発に従事しました。 一方で、日本各地、もちろん生まれ育った丹波篠山でも農業の担い手不足、耕作放棄地の増加が問題となっていました。その要因のひとつに里山の荒廃があり、獣害対策や保全管理のコスト増による農業経営への圧迫、さらには生態系の変化につながっているということを知り、農業と生きものとの関係を学ぶようになりました。 そうするうちに自分も農業の担い手となりつつ、課題解決に携わりたいと思い農家を継業しています。子どもの頃当たり前に思っていた農村風景を、農業や地域活動を通じて眺めるとまた違って見え、色々な発見のある毎日を送っています。

Q2. 生業(農業)を続けていくうえで課題は何ですか?

A. 課題は山積みですが(笑)、大きいのは人財の育成、続いていく仕組みづくりです。 課題の山を前にして一人では進めていくことはできません。特に農業は作物を栽培している田んぼや畑の中だけで成り立っているわけではなく、共有の水路や農道、里山の継続的な保全や管理があってこそ続けていけるものです。一方で、やっかいだなと思われている例えば草刈りや農作業も、実際やってみると面白くこれらを独り占めするのももったいないなと思います。農業を本業とする方、半農半Xな生き方、農業と関わり続けたい方、山とのつながりを創りたい方など、多様な農との関わり、価値観、連携を未来志向で続けていけるチームや仕組みをつくり上げていくことが回り回って農業を続けていく土台となると考えています。

Q3. 吉良さんにとって里山とは?

A. 歴史と挑戦ですね。 暮らしをジョイントとして長い間、人と自然との関わりの舞台であった里山。そこには想像以上の物語がつまっていると思います。一方で、一旦つながりが切れてしまっている今、次世代に何をジョイントとして人と自然との関わりを創っていくか。その挑戦の舞台が私にとっての里山です。クワガタムシを探し回り、秘密基地をつくっていたころを想いつつ、肩ひじ張らずに、でも真剣に、そんな存在とフィールドです。

Q4. 里山の暮らしに感じる魅力は何ですか?

A. なんといっても森や川、田畑すべてがつながっているという実感です。これには山仕事や農作業などの仕事をしているからこそより深く感じるかも知れませんが、そのつながりの中にきちんと人の役割があるんだというところですね。原生林でも公園でもなく、暮らしとつながっている自然である里山。その関わりしろの広さが魅力です。

Q5. 将来、暮らしている地域がどうなっていってほしいですか?

A.絶えず生まれ変わっている地域となっていてほしいですね。 人の役割がある自然ということは、社会の変化に即して関わり方も変化させていく必要 があるということです。未来を見ながら、一方で足元の生きものへの配慮も忘れず、直線的な開発でない新陳代謝のある地域。新しいテクノロジーを駆使している一方で、自然をベースとしたそんなダイナミックさの中にある暮らしは、ある意味ハードかもしれませんが、ワクワクしますね。

若者世代へ向けて

Q1. 里山での暮らしの中でサステナブルを意識して行っていることはありますか?

A. できる限り、地域の資源を活用していくことです。 地域の中で小さくても循環をつくっていくこと。色々と試行錯誤中のものばかりですが、サステナブルとは多様性を活かすつながりを創れているか?ではないかと思います。そのあたり、短い時間ではありますが意見交換していきましょう!

Q2. 参加する若い世代へ一言お願いします。

A. 「こうすれば課題は解決する」という答えや方法を知るところでなく、 身体を動かしながら実践を通じて解決策を共に考えていくある意味ハードなプログラムです(笑)。 一緒に学び合いましょう!
木こり
辻 徳人
村人
佐古田 ちどり